ゼロから始める防災士学習日記(防災士教本を参考)、
第五講「災害とライフライン」。
ドローン防災士として、ライフラインそのものに関する知識は必須。
前の記事では、ライフライン復旧のために我々が貢献できる可能性について述べました。
そこで今回は、そのライフラインの基礎知識について学んでいきたいと思います。
学習ポイントとしては、電力・ガス、水道、通信といった代表的なライフラインの基礎知識と復旧の手順等について、見ていきましょう!
【電力】
言うまでもなく、電力は我々の生活にとって無くてはならないもの。
しかし、地震、風水害、火山噴火、大火事など、全ての災害において、停電のリスクは常につきまといます。特に地震に関しては、広い範囲で何日にも渡り停電する可能性が高い。そこで、電力会社はそのリスクを最小限にとどめるため、次の三点を防災対策の基本方針としています。
1. 被災しにくい設備づくり
電力設備の耐震設計などは基本ですが、その他にも設備の多重化などのバックアップを用いた、被災しにくい設備設計が実現されています。
2. 被災時の影響軽減
自動制御による事故区間の切り離し、配電調整を行います。例えば、被災地で一部の配電線が断線してしまっても、電気の流れを切り替えることで他の変電所から配電します。また、復旧しない地域に関しては、移動用機器を使っての電力供給も可能です。
3. 被災設備の早期復旧
大規模災害の場合、24時間常駐の運転・保守員などが初期の停電復旧を行い、同時に電力会社内部では非常態勢を発令し、全力で復旧に取り組みます。
「ドローン防災士」は、これら三点のうち「被災設備の早期復旧」において活躍の場があるかもしれません。そこで電力会社がどのようなプロセスで復旧に望むのかを、知っておくと良いのではないでしょうか。
フェーズ1:非常態勢の発令
非常災害対策本部を設置し、戦略的な復旧活動が行われます。被災設備の状況、停電発生状況、関係機関からの要請などの情報をできるだけ早くかつ詳細に把握し、優先順位をつけた上で復旧作業に取りかかります。
ここでのポイントは、できるだけ早くかつ詳細な状況把握が求められているという点です。もちろん、非常事態に勝手に空撮するわけには行きません。しかし地域内に電力設備があるエリアの場合、地域のドローン防災士との連携により迅速な情報収集が可能になります。
災害が起こった時に、ドローン防災士がどのような手順で空撮および情報提供をするかを予め決めておけば、この取り組みはワークするはずです。実際に電力設備の周囲において、防災訓練をはかり、飛行ルートを決めておけば良いでしょう。
フェーズ2:応急復旧用資機材の確保
工事対応のための在庫を使用、または他の電力会社からの資材融通を受けて、行います。ここにはドローン防災士の出番はないでしょう。
フェーズ3:特殊車両の配備
発電車、移動用変圧器車などを使用。ここも同上で電力会社の役割です。
発電設備に関しては以上です。
基本的に電力会社の要請がない限り、動く必要は無いでしょう。
しかし、「切れた電線」に関しては自主的にドローンを飛ばして、どこが危険箇所なのか把握して、避難所などのコミュニティに情報共有する必要があると感じました。
先の朝倉豪雨調査で目撃したのですが、避難した後も自分の家がどうなったているか気になり、被災地に立ち入る方が多数いました。寸断された電線がいくつも川に垂れ下がり、非常に怖い思いをしつつも、彼らは自分の家に近づいていきます。
切れて垂れ下がった電線、電線に樹木や看板、アンテナが接触している場合も、同じように感電の危険性があるそうです。これを予め、ドローンで特定して注意を呼びかける事でドローン防災士が活躍するような気がしています。
【ガス】
ガスには都市ガスとLPガスの二種類があります。
都市ガスのパイプラインは大半が地中に埋設されており、地震の場合、地盤変動の影響を直接受けることにより、被害を生じる可能性が高いのですが、最近は震度7程度でも十分耐えられる耐震性素材を使用した区間も増えているようです。
LPガスは都市ガスとは異なり、ガスボンベやガスバルク貯槽からの個別供給になるため、ガスを届ける交通インフラさえ問題なければ、震災直後からの供給も可能です。
ガスも電力と同じように、ガス会社による予防対策、緊急対策、復旧対策という三つのフェーズで考えることができますが、上記のように地中のパイプラインや個別配送での供給になるため、ドローンによる確認は必要ないかもしれません。
【上水道】
水道システムの概念は、上流から下流まで三つのパートに分かれて考えることができます。
1. 取水、導水、浄水施設
2. 送配水施設
3. 給水装置
例えば地震の際の断水の原因としては、末端の配水管網が寸断されることによるものが最も大きいと言われています。この場合、水道管は道路の下など地中にあるのでドローンの活躍はあまり期待できません。
しかし、上流の部分に関してはドローン防災士の出番があるかもしれません。浄水場よりも上流、つまり導水管の部分が損壊していた場合、そこから水が漏れ出ることで下流の浄水場への水の供給が止まります。もちろん、ダムのチェックも必要です。
朝倉豪雨ドローン部隊出動の際に、災害対策本部でお見かけしたのですが、独立行政法人の水資源機構が我々と同じように、ドローンによる調査を行っていました。ただ、人員は足りていなかったようなので、風水害におけるドローン防災士の活躍の場もあるのではと考えています。
【下水道】
上水道の配水管網と同様、地中に埋設されている場合がほとんどのため、ドローンの活躍の場は少なそうです。
【通信】
主に固定電話と携帯電話に分かれます。
災害時には、固定電話、携帯電話ともに通信設備への直接被害が想定されます。また、物理的な被害だけでなく、被災地への大量の安否確認等による輻輳(つながりにくくなる現象)もあります。東日本大震災の際は、通常の9倍の電話トラフィックがあったといいます。
ここでのドローン防災士の役割は、基本的に電力会社の時と同様で「被災設備の早期復旧」においてでしょう。通信事業者と地域の防災士による日頃からの連携により、防災訓練、いざと言う時の飛行ルートを決定しておきます。
以上、ライフラインの基礎知識とドローン防災士が貢献できそうな役割についてでした。何れのライフラインも、提供会社の邪魔になるようなオペレーションは避けなければなりません。重要なことは、日頃からの防災訓練やコミュニケーションではないかと感じています。
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