世界中の空を利用可能にする
S:ROAD物語
第一章:「空の道」ビジネス爆誕!
都市の喧騒から離れたとあるカフェで、起業家のユウトと旧友のミカはドローンビジネスの可能性についてディスカッションしていた。
「配送ドローンって知ってる?離島や山の中まで荷物や薬を運べるから、過疎地で実験が始まっている。災害の時にはすぐに救助の手を伸ばすのに役立つし、大きな建物や橋の安全を確かめたり、農場や山での仕事ももっとラクになる。さらに、夜間や人のいない場所を見守るためのセキュリティにも使える。本当に、いろんなところでドローンは役立つんだよ。」まずユウトが口火を切った。
「え〜。そうなんだ! ドローンって空撮とかで空を飛んでるだけだと思ってたけど、そんなに色んなことに役立つんだね。これって、未来の生活がかなり便利になるってことだよね。ホント、すごい時代になったもんよね。」
「そこでミカ!うちの会社でドローンが飛ぶ空の道を全国に作っていくプロジェクトを始めようと思ってる。S:ROADという名前で展開したい。「空の道(スカイロード)」の略だ。」ユウトの目は真剣でありながらも、わずかに興奮した輝きを持っていた。
ミカは興味津々とした様子で、詳しく説明してほしいと要求した。ユウトは、説明を続けた。「S:ROADは、空中に住所みたいなもの(スカイドメイン®️)を作るんだ。そして、そのスカイドメインを使って、ドローンが安全に飛ぶ道を作る。それに、この情報を取引する新しいシステムも作る。そしてこれをサポートする人たちがS:ROADシステムを使って、みんなで空の道路を作っていくんだ。」
「それは大変興味深いわね… でも、資金はどうするの?」
ユウトはしばらくの沈黙の後、深く息を吸い込み、言った。「今まで研究や作業のためのお金は、自己資金や、エンジェル投資家たちからのお金でやってきたんだ。でも、S:ROADを本当に大きくするためには、もっとたくさんのお金が必要だよ。この空の道のアイディアは、今までにない新しい考え方なんだ。」
ミカは、この画期的なアイディアに深く感銘を受けた。「ドローンが飛ぶための新しい道を作ろことが、たくさんの人たちの生活をよくする大きなプロジェクトになるんだね!」
ユウトは頷いて言った。「そう、私たちのビジョンは、住民の合意がとれた安心安全なドローン空路を日本全国に整備すること。さらにこのコンセプトとアイデアを世界中に提唱し、空のインフラ事業をグローバルに展開することだ。」
ミカは思案の表情を浮かべて言った。「伝統的な投資家たちにアプローチするのも一つの方法だけど、S:ROADの社会的意義を考えると、クラウドファンディングの方が合っている気がする。」ミカはユウトの理念に共感し、ユウトからの誘いを受けて会社にジョインした。
次に、二人は様々なクラウドファンディングのプラットフォームをリサーチし始め、社会的インパクトを重視しつつ、実績のあるプラットフォームを中心に選定して、その中から一社を決めた。だが、クラウドファンディングの説明を受けるたびに、心の中に不安が募った。見ず知らずの投資家が一気に増えることへの危惧。数百人の投資家とのコミュニケーションが求められる新しいリアリティに、身が引き締まる。
そんな中、厳しい事業審査と同時並行してクラウドファンディングの募集ページで使うクリエイティブの制作が始まった。ユウトは覚悟を決めて語り始めた。「皆さん、想像してみてください。物流や災害対応という社会課題解決のため、安全に空をドローンが飛び交う未来を。私たちS:ROADは、その実現に向けた第一歩を踏み出そうとしています。」
そして、運命のクラウドファンディングの募集当日。
ユウトは目を瞬かせることなく画面の数字を見つめていた。募集開始から132秒で、目標の1500万円が達成されていた。それがたったの24分後、募集上限の6000万円に増加。さらに、キャンセル待ちが170名もいるという通知が表示される。ウェブサイトをリロードするたびに、調達額が上がっていく様子に、ユウトとミカは、ただただ圧倒されていた。
「これがクラウドファンディングのチカラ…」二人はクラウドファンディングの底知れぬ可能性に驚くとともに、大きな責任を感じていた。
組織の拡大
クラウドファンディングの成功を受け、ユウトとミカのプロジェクトS:ROADは一気にスポットライトを浴びることとなった。しかし、大きな注目とともに彼らは新たな課題と直面していた。彼らのビジョンを具現化するためには、組織を大きく拡大する必要があった。
「ユウト、この規模のプロジェクトを二人だけで推進するのは無理。営業やエンジニア、さらには宣伝や管理を担当する人材が必要だよ。」ミカは深刻な表情でユウトに迫った。
ユウトもその必要性を感じていた。「そうだね、新たなメンバーを迎え入れるために、採用活動を始めよう。」
彼らはすぐに行動に移し、各種SNSや求人サイトに「空のインフラを一緒に作る仲間を求めています」というメッセージを掲載、採用サービスも使った。応募は予想を超える数となり、多くのビジネスマンやエンジニアたちがS:ROADのビジョンに魅了されて加わりたいとの意思を示した。
ユウトとミカは応募者たちとの面接を重ね、選ばれたメンバーたちとともに、新たな組織体制を築き上げる。新しく迎え入れたメンバーたちは、ドローンの飛行技術や法律、プロジェクト管理やシステム開発に関する専門知識を持っており、ビジネスの進行に必要不可欠な存在となった。
一方、PRや自治体連携を担当するメンバーたちは、S:ROADのビジョンを自治体や一般の人々に広める活動を開始。テレビやラジオ、新聞などのメディアに露出する機会を増やし、さらには学会やセミナーでのプレゼンテーションも行った。
また組織の拡大に伴い、ユウトとミカはリーダーシップや組織運営の重要性を再認識。彼らは組織のビジョンや目標、役割を明確にして、メンバー一人ひとりの意見や提案を尊重する姿勢を持つことで、組織の団結に務めた。
こうして多くのメンバーが参加する中で、S:ROADのビジョンはより具体的なものとなっていった。そして、それはユウトとミカの夢だけでなく、皆の共通の目標として、組織全体を駆り立てる力となったのだった。
第二章:空のまちづくり、始まる!
採用活動の結果集まったチームメンバーは一丸となって動き出していた。その中で、ミカがある人物との連携を提案した。「タケシを再度巻き込んでみるのはどうだろう?」
「タケシ?」とユウトが疑問の声をあげると、ミカは続けた。「彼はクラウドファンディングの時に私たちに投資してくれた人。T市出身で、私とは幼馴染なんだ。」
ユウトは即座に思い出す、「ああ、あの建設会社の若手経営者!」
ミカはうなずき、「そう。彼は自社が開発する分譲地で、ドローン活用を考えているの。S:ROADの合意システムを使って、分譲地の上空をドローン飛行可能にしてみたいんだって。それが自由にドローンが飛行できるまちづくりにつながると。」
「例えば地域御用達のお寿司屋さんがドローンで出前寿司を届けるサービスってどう?想像してみて、スマートタウンに空から運ばれる新鮮なお寿司。」
ユウトの目が輝いた。「それは素晴らしい! タケシが考えたこの新しい形のまちづくりに、さまざまなドローン活用のアイディアを取り入れれば、我々のS:ROADのよいユースケースになりそうだね。」
ミカが微笑みながら言った。「私がタケシに連絡してみる。もし彼が乗ってくれれば、私たちの空のまちづくりも加速するはずよ。」
それから数週間かけて、ミカとタケシの間で何度か話し合いが持たれ、ついに参加が決定。タケシは地域のまちづくり協議会にこのプロジェクトの概要を話し、S:ROADをT市役所にも紹介した。そしてS:ROADは、T市を中心に新たなビジネスモデルの策定に取り組むこととなった。
「ドローンを活用した新しいまちづくりの形、それを多久から全国、いや、全世界に広めるためには、我々の力を結集する必要がある。」タケシの言葉に、協議会のチームは更なる情熱を感じ、大きな挑戦に心が燃え上がった。
タケシのビジネスモデルとS:ROADのビジョンを組み合わせることで、新しい道が切り開かれた。ドローンによる新しいライフスタイルの提案、そしてそれを受け入れる社会の形成。これこそが、彼らが目指す新たなムーブメントだった。
このムーブメントを支持したT市はS:ROADとの連携協定を締結し、ユウトはタケシ達と本格的な「空のまちづくり」という壮大なプロジェクトを開始したのであった。
投資家たちの情熱
T市との協定締結の成功を経て、ユウトとミカは更に一歩を踏み出す決意を固めた。彼らの新たな取り組みとして、「T市の空のまちづくり」に関するセミナーの開催を決定。その目的は、S:ROADのビジョンをより多くの人々に伝え、他の地域でも空路の開拓を広げることだった。
セミナーの企画段階で、ユウトとミカはタケシたちとのミーティングを頻繁に行い、内容を詰めた。「セミナーの主要なターゲットは全国のドローン事業者だ。彼らがこのビジョンに共感し、支持してくれれば、私たちの活動はより大きなステージに進むことができる。」ユウトの言葉に全員がうなづいた。
そして、セミナー当日。T市の会場には多くのドローン事業者が集まり、興味津々でセミナーの開始を待っていた。中でも、A市から来たヨウスケとトシの2人は特に熱心にノートを取りながら話を聞いていた。彼らも実はクラウドファンディングに投資してくれた投資家であり、S:ROADのパートナーとなることを強く希望していた。そして、自分たちの住むエリアでも「空のまちづくり」を実現したいという強い想いを持っていた。
セミナーが進む中、ヨウスケが手を挙げ質問。「このモデルを他の地域でも展開する計画はあるんですか?」
ユウトは微笑みながら答えた。「もちろんです。私たちはこのモデルをT市だけで終わらせるつもりはありません。私たちはS:ROADを使って空の道を開拓し、事業創造するプレイヤーをスカイディベロッパーと名付けました。スカイディベロッパーは私たちのビジョンを理解し、共感していただき、他の地域での展開をサポートしていただく存在です。」
トシも熱心に追加。「私もスカイディベロッパーとして、自分たちのエリアでこのモデルを取り入れ、広めさせてください。ドローンが飛ぶ空のインフラ構築に参画できるなんて光栄です。」
セミナーが終わると、ユウトとミカはヨウスケとトシと深く話し合うこととなった。彼らは惜しむことなく、ヨウスケとトシにスカイディベロッパーのノウハウを伝えることを決意した。さらにS:ROADが地域の空路開拓をサポートできるよう、システム面での機能強化を急ぐ方針を固めた。
「多くの人々にスカイディベロッパーになっていただき、空のまちづくりというビジョンのもと、共に新しい未来を築いていきたい。」ユウトの言葉を胸に、新たな道が切り開かれていくこととなった。セミナーは大盛況に終わり、多くの人々の想いと共にここからS:ROADが始動し始める。
第三章:S:ROAD広域連携の実現
ヨウスケとトシの熱意が芽吹いた結果、A市での「空のまちづくり」の展開が正式に始まることとなった。彼らが住むA市は、T市とは異なる地域性と課題を持っていたが、S:ROADのビジョンは同じく空路の開拓を目指すものであった。
A市での取り組みの初めとして、ヨウスケとトシはA市の自治体や地域のリーダーたちを集め、ワークショップを開催した。彼らが率いるスカイディベロッパーチームと共に、S:ROADの成功例や知識を共有し、どのようにA市でも成功させるかの議論が行われた。
「私たちはT市での成功を基に、A市でも空路を開拓し、新しいまちづくりを進めていきたい。」とヨウスケは情熱を込めて語った。
A市の担当者も「A市は独自の魅力や特色がありますが、それを更に高めるためにも、S:ROADのような新しい取り組みは非常に興味深い。」とポジティブな反応を示した。
ワークショップの中で、ヨウスケとトシのスカイディベロッパーチームはT市での事例を元に、A市の地域性や課題に合わせたプランの提案を行った。特に、ドローンを活用した配送の取り組みは、山間部の高齢化による免許返納者増加やドライバー不足の解決策として大きな関心を集めた。
数ヶ月後、A市でのプロジェクトが始動。初めは小規模な試験的な実験から始まったが、地域の人々や企業からの支持を受け、次第に規模を拡大していった。特に、ヨウスケとトシが提案したドローン配送のサービスは、A市の商店街や地域住民から高い評価を受け、注目のプロジェクトとなった。
そして、A市での取り組みは周辺自治体にも影響を与え、多くの市町がS:ROADのモデルを参考に、自らの空路開拓の取り組みを始めることとなった。ヨウスケとトシのスカイディベロッパーチームは、他都市展開の良い事例として称賛されることとなる。
「空のまちづくり」と地方創生
一方、T市での空のまちづくりも軌道に乗りはじめていた。ユウトとミカのもとへ視察を希望する声が増えてきた。実は、この成功はタケシの建設会社との協力が大きな要因となっていた。タケシとユウトたちは、毎週のように各地からの視察団を受け入れて、そのモデルを世に広める活動を進めていた。
タケシは地域の先進的な建設会社として注目を浴びる中、リアル空間のプロデュースに留まらず、時代のトレンドであるメタバース領域における地方創生ビジネスにも進出。この新しい取り組みが、彼の事業をブレイクさせ、全国デビューを果たした。
「T市が空のまちづくりを成功させた背後には、ユウトたちS:ROADとの連携があります。」とタケシは視察団に語った。こうして、空のまちづくりをきっかけとして、スカイディベロッパーが自らの本業も成功させる良いモデルが誕生した。
T市は「ドローンの町」として、その名が全国に知れ渡るようになる。そして、さらなる新しい試みが次々と実現していった。かつての廃校がドローンスクールとして生まれ変わり、学び舎は新たな生徒たちの熱意で賑わうように。そして、災害調査の訓練など、S:ROADが提供する空路を利用したさまざまな社会実装も行われるようになった。
次第に、視察団のメンバーも多様化。国の役人や大学教授など、さまざまなバックグラウンドを持つ人々が多久市を訪れるように。彼らは多久市の取り組みを熱心に学び、それぞれの立場から空のまちづくりの可能性を考えるようになった。
「T市のような町が、日本の地方都市の新しいモデルとなるかもしれませんね。」とある大学教授が感慨深げにつぶやいた。
この流れは、T市の成功がただの一過性のブームではなく、真に持続可能で拡張可能なモデルであることを示していた。空のまちづくりの影響は、T市やA市だけでなく、全国各地へと広がりを見せていたのである。
第四章:レベル4の試練
会議室には、新たなプロジェクトの進行状況と困難な課題を示す資料が広がっていた。つい最近解禁となった第三者上空飛行(レベル4)を実施する事業者として国の補助事業に採択された喜びとは裏腹に、S:ROADのメンバーたちは次第に緊迫した表情を見せていた。
「レベル4のドローン…」とユウトが呟き、しばらく沈黙する。
「あの価格、補助金だけではとても賄えないよ。」
ミカは焦った様子で言った。「どうしよう。これは私たちのビジネス開発にとって重要な機会。ぜひ、チャレンジしたいけど。」
ユウトは彼女の言葉にうなずきながら、ディスプレイに表示された予算と補助金の差額を指さした。「この差をどう埋めるか。それが今の最大の問題だ。」
「国内でレベル4のドローンを提供している企業との連携が有力な選択肢だが。」と、ユウトは深く考え込んだ。この案について、ユウトは期待と疑問の両方を感じていた。
彼らは国内のトップメーカーにアポイントメントを取り、数日後にはその企業の本社を訪れていた。会議の内容は具体的で、双方の要求や希望が交差するが、新しいパートナーシップの可能性はなかなか見えない。
ミカは積極的に交渉を進めた。「第三者上空を飛ばすのだから、S:ROADの最大の強みである、地域を巻き込んだ空路開拓のアプローチは必ず役に立ちます。その点、御社のレベル4の機体運用とのシナジーは最高です。」
しかし、交渉は一筋縄ではいかなかった。最も争点となったのは機体価格。レベル4の機体開発に多額の投資をしているメーカーは、これを安価に提供することなど不可能だ。しかし、高額すぎる機体を社会実装することは絶対に不可能。市場ニーズにも応えなければならない。
帰社後、ユウトとミカは再び会議室で頭を悩ませていた。「確かにあの機体メーカーとのパートナーシップは有力な選択肢だが、それだけでは足りない。顧客となりうる大手企業を巻き込むことで、より強固なビジネス基盤を築く必要がある。」
ユウトは肩を落とした。「しかしこれまでの拡大、特に人員増加や開発費、知財関連のコストが思ったよりも経費を圧迫している。」
ミカは彼を励ました。「でも、これが最大の試練。乗り越えれば、次はもう飛躍のステージだよ。」
ユウトは彼女の言葉に感謝の意を示しながら、決意を新たにした。「君の言う通りだ。この困難を乗り越え、新しい航空の未来を築こう。」
S:ROADのメンバーたちは、新たな試練に立ち向かう覚悟を固めた。
災害と希望の光
S:ROADのオフィス内。ソファに腰掛けるユウトの横に、ミカがコーヒーカップを持ちながら近づいてきた。彼らのオフィスには夢と現実の狭間に立たされた雰囲気が充満していた。
「ユウト、私たちのプロジェクト、本当にうまくいくの?」ミカの声には不安と期待が混ざっていた。
ユウトは深く息を吸い込み、少しの間を置いた後で答えた。「ミカ、確かに今は厳しい状況だけど、信じて進むしかない。私たちのスカイドメインの技術とS:ROADのコンセプトは、ドローンが必須とされる環境で必ず必要とされる仕組みなんだ。」
彼らのビジネスモデルS:ROADは、第一回目に投資してくれた多くの人々から大きな期待を背負っていた。一方で、レベル4のドローン飛行要件の厳しさが彼らの前進を阻んでいた。第三者の上空飛行が進展しない限り、このプロジェクトの本当の価値は伝わりにくい。この状況下、彼らは日々の業務に追われる中、夢の実現のための策を練り続けていた。
しかし、ある日、その状況は一変することとなった。
今年の夏、全国は前代未聞の大規模豪雨に襲われた。特にT市は線状降水帯の影響で断続的な降雨が続き、甚大な被害が出ることとなった。ユウトとミカが率いるS:ROADとT市とは以前からドローンの活用に関する協定を結んでいた。彼らは被害の報を受け、ドローンの力で何か役立てることはないかと考えた。
「ミカ、この災害は大変だけど、私たちの技術で助けられる人がいる。災害現場の調査や被害状況の把握、復旧のサポート…ドローンにできることはたくさんある。」ユウトは力強く語りかけた。
ミカは目を輝かせながら答えた。「そうね、今こそ私たちの技術が役立つ時。行こう、ユウト。」
彼らのドローンは、T市の災害対応に大きく貢献することとなった。情報収集や救助活動のサポート、被害状況の確認、被災地への医療物資の輸送など、多岐にわたる活動を行い、多くの人々から感謝の言葉を受け取った。
この活動を通してユウトは、新たな可能性を見出した。災害時のドローン活用の必要性と、それに伴う訓練の重要性だ。彼はT市の市長に、S:ROADを使った災害時のドローン飛行トレーニングの提案を行い、市長もこれに強く共感した。結果として、T市の消防団員たちがS:ROADの「空の道」を活用し、ドローンの操作トレーニングを受けることとなった。
レベル4飛行の壁という厳しい外部環境の中、ユウトたちは新たな道を見つけ、社会のためにその技術を活用することを決意した。災害訓練用の空路確保をベースとした、S:ROADの新たな使命と方向性が確立され、彼らの挑戦は次のステージへと進んでいった。
第五章:S:ROADの真の価値
夏の豪雨災害を経て、ユウトとミカが率いるS:ROADのオフィス内には、希望の光が再び差し込んでいた。先日、T市での災害活動を通して確立した新しい方向性が、他の都市や企業の注目を集めていた。
ミカがユウトのデスクの隣に立ち、気になるメールを見せた。「ユウト、これ見て!全国的に有名な自動車学校S社の社長、トオルからのメールよ。」
ユウトがメールを読むと、トオルの情熱的な提案が綴られていた。「私は自動車学校の教育方針として、実際の道路環境での教育の重要性を強調しています。そして、ドローンにおいても、実空間での飛行経験が不可欠と考えています。」
ユウトの目が輝いた。「彼はどうやら、S:ROADをBtoBの訓練コースとして使いたいようだね。」
ミカが頷きつつ続けた。「競合となる私有地でのトレーニングが存在するけれど、S:ROADの真の価値はその社会との合意にあり、実際の空の環境に近いトレーニングが可能だから。」
ユウトは深く考えた後、メールでトオルにミーティングの提案を送った。
数日後、オフィスでのミーティング。トオルは真っ直ぐにユウトの目を見つめ、「私たちの自動車学校は全国に多くの教習所を持っている。S:ROADの取り組みを活用し、ドローンの実環境飛行訓練フィールドとして導入したい。自治体やインフラ企業向けのBtoB訓練コースとしての導入も視野に入れています」と真剣に語った。
ユウトは返答した。「私たちも災害時のドローン活用とその訓練の重要性を実感しています。S:ROADを活用しての提携は、大きな可能性を秘めていると感じています。」
トオルは深くうなずき、「私有地のトレーニングは限られた空間でのもの。しかし、S:ROADは社会との合意のもとに空路を確保している。実際の環境に近い状況でのリスクアセスメントが可能だ。これは操縦士たちにとって、最高のトレーニングとなる。」
ミーティングは熱意に満ちた空気で進行し、最終的には双方の提携を決意した。S:ROADとS社は、全国的にドローンの実環境飛行トレーニングを展開していくこととなった。これにより、多くのドローン操縦士たちは現実的な環境での飛行経験を積むことができるようになり、その技術と安全性がより一層向上していった。
最終章:「空の未来」へ向けた二度目の挑戦
S:ROADのドローン飛行訓練プログラムは、多くのドローンオペレーターから高い評価を受け、日々進化を遂げ
ている。その原動力となっていたのは、チーム全体が共有する「世界中の空を利用可能にする」という夢だった。
ユウトがチームの前で話し始めた。「今、全国のスカイディベロッパーたちが、地域との合意を得つつ、安心・安全なドローン空路を築き上げている。さらに、トオルさんの自動車学校や他の全国のドローンスクールが、災害調査や実際の現場トレーニングをS:ROADを活用して実施している。このムーブメントを見て、ドローンを前提とした未来社会を思い浮かべてみてほしい、レベル4が解禁された後の世界を。自動巡回や物流用のドローンも、スカイディベロッパーさんたちが開拓したS:ROADの空路を飛んでいる世界だ。」
ミカは興奮しながら反応した。「まさに私たちのビジョンだよね。この国の空のインフラの基盤として、各地域の空路ネットワークを築いていくこと。でも、新しいプロジェクト、大手ドローンスクールRとの提携には、かなりの資金が必要だよね?」
ユウトはうなずき、「自治体との連携を考慮しても、これからのステップは資金集めがキーになるだろう。」と語った。
ミカは一瞬考え、決意を込めて言った。「前回のクラウドファンディングの成功を踏まえ、再度、クラウドファンディングを利用してみてはどうだろう?」
ユウトは意外そうな顔をしつつ、ミカを真剣に見た。「前回の成功は多くの人々の協力があってのこと。だが、再び彼らに頼ることは...」
ミカは速やかにユウトを遮った。「これは頼むというより、私たちのこれまでの歩みと、これからの展望を共有すること。多くの支援者がS:ROADの成果を感じている。彼らに、さらなる飛躍のための協力を求めるのは、恥ずかしいことではない。」
ユウトは深く呼吸し、一瞬の沈黙を経て、「君の言うとおりだ。前回のサポーターたちに、私たちがどれほどの夢を叶え、これからどう進めていくのかを伝えるべきだ。そして、新しい夢を実現するための資金を共に集める。前回のサポーターたちに再びこの旅に参加してもらうため、呼びかけを始めよう。」
あゆみは遅くとも、間違いなく「世界中の空を利用可能にする」というユウトたちの壮大なビジョンは、近づいている。ネットラジオから懐かしいメロディーが飛び込んできた。
負けないこと、投げ出さないこと、逃げ出さないこと、信じ抜くこと
涙みせてもいいよ、それを忘れなければ... (それが大事の歌詞より by 大事MANブラザーズバンド)
「そうだ。社会に支えられるコンセプトなら、どんな夢も必ず叶う!私たちが途中でやめさえしなければ、必ず。」
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